Project/Area Number |
06640652
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Physical chemistry
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮坂 博 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (40182000)
|
Project Period (FY) |
1994
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
|
Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1994: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
|
Keywords | 光誘起電子移動 / 四波混合 / ピコ秒分光 / ホール移動 / 過渡二色性 |
Research Abstract |
電子移動は多くの化学反応において基本的な過程として重要な役割を果たしており、広範な系にたいして多くの研究がなされているが、多くの研究は、電子受容帯(A)と供与体(D)の間の相互作用が比較的弱いものとして行われている。。しかし、実際の分子集団系では、非常に強いDAの相互作用の場合や、一つのAに対して複数のDが存在するような複雑な系も多く、生態系などではこれらの相互作用の程度やD-D間の相互作用の大きさを巧みに制御し電子移動諸過程が行われていると考えられている。(例えばD^+-D間の相互作用の最も大きい場合は、ダイマーカチオンであり、弱い場合にはホール移動が対応する.)本研究ではこのような強い相互作用の系での電子移動現象の総合的な理解を大きな目標とし、まずA・D-D系の電子移動諸過程に与えるD^+-Dの間の相互作用の影響を、ピコ秒過渡吸収や、過渡二色性、また新たに作製した四波混合分光や近赤外分光を用い検討した。Aとして1,2,4,5-テトラシアノベンゼン等の代表的な分子を、また、D及びD-D系としては、エチルカルバゾールやその二両体モデルを用いて行った。更に、これらの系の測定をポリマー系に対しても応用した。 (1)まず、光誘起電子移動過程によって生成したA^-D^+系とA^-D_2^+系の再結合速度の値を、いくつかのA及びD,D-D系を用いて、溶液中でピコ秒過渡吸収分光法によって検討した。その結果、ダイマーカチオンとして比較的強い相互作用を示す系でも、全く相互作用の無い系でも本質的に再結合速度にはほとんど変化はなかった。一方、相互作用が非常に弱いD-D系でのみ、再結合速度が小さくなることがわかった。この結果は、D-D間の相互作用の程度によって、電荷再結合速度の制御が行いうることを示している。 (2)この非常に弱い相互作用に対して、過渡吸収二色性や新たに作製したピコ秒四波混合分光装置を用いて、側鎖間のホール移動の可能性を検討した。その結果、側鎖間のホール移動過程は観測されず、従来の理論で考えられ得る非常に弱い相互作用としてのD-D間のホール移動よりも、更に弱い相互作用の形態が示唆された。この事については、近赤外部の吸収を測定を行い検討しているが、現在までの結果では検討できる範囲まで(約1200nm程度)に、新たな吸収は無い結果が得られており、相互作用としては、著しく弱いことが示されている。 (3)このようなD-D^+間の比較のため、Dが非常に多い極限と考えられる高分子のフィルムや溶液中の電子移動過程も、同種の測定法を応用した。その結果、これらの系のホール移動過程の測定に対して、過渡二色性の測定が有効であることがわかり、速度定数を決定できた。 これらの結果をふまえ、特に過渡二色性の測定や近赤外部の分光を拡充し、現在更に詳細な研究を推進している。
|