Research Abstract |
実験は,分子科学研究所極端紫外光施設の専用ビームライン(BL4A,白色光)で実施し,結晶成長に対しては自作した装置(成長装置,特殊な差動排気装置,ガス導入システム,排ガス処理装置)を利用し,原料の吸着,分解状態の観察は,既存の表面分析装置を用いて行った。成長実験の場合,原料としてDEZn,DETe,DESeをキャリアガスとしてH_2をそれぞれ使用し,同時供給ガスフロー法と交互供給法の2つの供給方式でGaAs(100)面基板上へのZnTe,ZnSeの成長を実施した。その結果,励起光源としてシンクロトロン放射光(SR光)を用いると,供給法によらず室温でのエピタキシャル成長が可能となること,膜中へのC汚染は殆んど見られないこと等の特有の低温結晶成長が実現できることを実証した。各種成長条件(基板温度,原料供給量,VI/II比,窓材の有無等)と成長速度の関係,成長膜の厚さ分布と光強度分布との関係等を詳しく調べ,表面励起過程が重要であること,高い効率(量子効率0.7%以上,成長効率280〜4300μm/mol)が室温成長において得られること,150nm以上の波長の光は成長に寄与しないこと等を明らかにした。また,交互供給法により,マクロ的に見てもミクロ的に見ても良好な表面状態を有するエピタキシャル膜が室温で実現できること,更に原料供給量に対し成長速度がZnTe単分子層に相当する量で完全に飽和することを見いだしており,励起光源としてSR光を用いることにより室温でのALE成長の可能性を実証した。原料の吸着,分解状態の観察に関しては,今の所,GaAs(100)基板上のDEZn吸着層へのSR光照射効果をXPSで調べたに過ぎない。しかしながら,SR光照射によりDEZnは-150℃においても分解されること,Cは脱離し,表面に殆んど残らないこと等のSR光の有用性がミクロ的なレベルからも少しづつ明らかとなっており,本結晶成長を理解する上で有益な知見が得られている。
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