Research Abstract |
本研究では,騒音が大きい工場内でも騒音を遮断して,人の声が明瞭に聞こえるような耳栓を開発することを目的として,細管が内径と長さできまる遮断周波数以上の音を通さなくなる特性に着眼し,超極細管から成る音響フィルターを設計及び試作し,さらに,それを用いた耳栓を実際に製作して,被験者を対象に音節明瞭度試験,単語了解度試験及び文章了解度試験を行なった.会話を伝達するには,日本語の5母音の第一,第二フォルマントをふくむ3000Hz程度までの音声を明瞭に伝達できればよい.万一,工場騒音にはそれ以上の高周波成分がかなり含まれている.この高周波成分を除去すれば,音声をかなり明瞭に伝達し得ると考えられることから,超極細管束音響フィルターの設計にさいしては,細管の遮断周波数が3000Hzと成るように,また耳栓寸法の制約を考慮して,諸寸法の解析及び音響特性のシュミレーションを行なった.なお,これらの諸計算及び実験データの収録,解析には補助金によるスーパー・ワーク・ステイションを使用した.試作した超極細管束音響フィルターは,小さなステンレス製外管(外径3.5mm,内径2.9mm,長さ10及び14mm)の中にステンレス製超極細管(内径0.05及び0.07mm,外径0.12及び0.15mm)を充填した多孔パイプ形構造となっている.耳栓はプラスティク製プラグの中に上記の音響フィルターを埋め込んだ構造となっている.実験での騒音環境には金属切削音からなる工場騒音(オーバオールレベル90dB)を用いた.音節明瞭度試験では,個人差がみられるが,耳栓を装着することにより,正答率が高くなっている.さらに,単語了解度試験及び文章了解度試験では,正答率がほぼ100%となる結果が得られており,考案した耳栓の有効性を確認することができた.音響フィルターの特性実験では,対象が微小なため,装置等の振動の影響を受け易く,実験装置及び方法に関して,今後の検討課題を残している.
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