Research Abstract |
住宅のラドン汚染機構を定量的に把握することを目標として,すでに,床下を持つ住宅とその周辺の土壌および外気を一つの系として、ラドンの移流・拡散をシミュレートする数式モデルを設定し、その電算プログラムを作成しているが,その主要なサブシステムである土壌層におけるラドンの移流・拡散計算における連立一次方程式の解法について線順法と前処理付き共役勾配法を比較し,計算速度,結果の安定性ともに後者の方が優れていることを確かめた。 土壌層からの対流によるラドン移送について実測値とシミュレーション結果を照合したところ,土壌層の均質性を仮定したのでは両者を一致させることはできず,土壌層を透気係数の異なる二層モデルとすることによって良好な結果が得られる場合もあることを明らかにした。 地表面から外気あるいは床下空間へのラドン移送特性を把握するため,上記のシミュレーションプログラムを用い,ある基本的建物モデルについて計算を行った。地表面とその上方の空気との間の物質伝達係数は上方の空気の流速の関数として与えているが,床下空間の気流速度予測が困難であるため,この気流速度のラドン移送量への影響を調べたところ,地表面ラドン濃度は気流速度に大きく支配されるものの,ラドン移送量にはほとんど影響を与えないこと,土壌特性としては透気係数が支配的な要因であることが分かった。その他の支配要因としては,土壌中のラドン発生量,透気性土壌層の厚さ,建物の煙突効果などが重要であることが明らかとなった。
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