Research Abstract |
(1)白川の条坊地割りの中核をなす六勝寺の「供養記」や,「中右記」,「山槐記」,「明月記」,「百錬抄」などの平安時代末期から鎌倉時代にかけての古記録から,白河の条坊地割に関連すると思われる寺社,邸宅,御幸,火事,地震などの記事を抽出した。 (2)抽出した文献情報が関連する空間の形状や位置を,街区,街路,建物などの種類ごとに分類し,画層を分けてCADに入力した。入力は汎用CADソフトのひとつであるAutoCADに,ディジタイザを用いておこない,図形情報のデータを作成した。同時にデータベース・ソフトのひとつであるdBASEIIIに,文献情報の時期,種類,記事の内容などの属性を入力し,文字情報のデータベースを作成した。 (3)AutoCADの機能のひとつで,地理情報システムに類似するASE機能を用いて,(2)の図形情報と文字情報を組み合せ,条件の一致する街区や街路だけを図示したり,図の中で指示した街区や街路の文字情報を表示するなど,文字情報と図形情報の間を双方向に検索できるデータベースを構築し,条坊地割りの復原作業に援用し,空間的広がりを属性にもつデータベースの有効性を確認した。15EA04:(4)白河の条坊地割の復原案の中に,CADの拡大,縮小,画層の重ね合わせ機能などを用いて,広がりを持つ文献情報を参照し,コンピュータの画面の中で重ね合わせて,白河の条坊地割りにおける特定の街路の持つ意味や,ある街区の空間特性などを検証した。一例としてば天皇の法勝寺への御幸路が二条大路末の東行を憚ることから,白河の条坊地割の中に御幸を禁忌とする空間が存在することなどを明らかにした。白河にとどまらず平安京に関するこうしたデータベースの構築は今後の課題である。
|