Research Abstract |
強誘電性ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr_<1-x>Ti_x)O_3:PZT)の単結晶を広い組成範囲で作製し,蛍光X 線分析,X 線回析,透過型電子顕微鏡,光学顕微鏡,誘電率の温度依存性から,組成,結晶構造,内部組織,キュリー点などを調べた.特に,初めてX<0.47の組成範囲で菱面体晶相のPZT単結晶の作製に初めて成功した.単結晶作製法にはフラックス法を用いた.作製した単結晶の組成は,仕込み組成に比べて,Zr 量が少ないことがわかった.これは,単結晶作製時にまず,Ti がペロブスカイト構造の B サイトを優先的に占めるためと考えられる.また,結晶構造を同じ組成での単結晶と多結晶焼結体を比較した結果,以下のことがわかった.菱面体晶相では,単結晶の方が a 軸が長かった.一方,正方晶では c 軸の長さは変わらないが,a 軸の長さはやはり,単結晶の方が長かった.また,菱面体晶,正方晶両方において,キュリー点以上で常誘電相である立方晶の格子定数は共に単結晶の方が長かった.さらに,キュリー点を同じ組成での単結晶と多結晶とを比較した結果,単結晶の方がすべての組成で約 40K 高いことがわかった.これらの原因としては,単結晶と多結晶体セラミックスでの試料作製時の環境の違いがにより自由エネルギー曲線の違いが挙げられる.内部組織については,正方晶では分域壁は {011} という低指数面だけが観察されたのに対し,菱面体晶では {110} と {100} 面が多数を占めたが,一部 {112},{122} の高指数面も観察された.以上の成果の一部は,すでに発表しているが,残りについても投稿予定である.
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