Research Abstract |
骨粗鬆症に基づく大腿骨頸部骨折は,1992年の厚生省長寿科学骨粗鬆症研究班の調査によると年間の患者数は69,000〜84,000人と推定され,前回調査に比較して増加している。大腿骨頸部骨折は「寝たきり老人」の原因として脳血管障害に次いで多いので,その予防や対策は重要である。 大腿骨頸部骨折は,転倒に対する強度や局所にかかる負荷の他,骨塩量や大腿骨近位部のきGeometryが関与している可能性がある。今回,これらの点を明らかにするために,日本人女性を対象に大腿骨近位部の骨密度(BMD)とHip Axis Length(HAL)および頸部幅Neck Width(NW)を測定した。 大腿骨頸部,転子間部およびWard三角のBMD(N=814)は,すべて20歳代に頂値を認め,以後加齢とともに低下を示し,とくにWard三角部のBMDの低下が著明であった。HALとNW(N=733)については,20〜79歳の範囲では両者は殆ど変化がなかった。つまり,前者は20歳代が9.44±0.54cm(平均±SD),50歳代が9.32±0.55cm,70歳代が9.46±0.49cmであり,後者は20歳代が4.51±0.41cm,50歳代が4.63±0.39cm,70歳代が4.66±0.49cmであった。HALまたはNWと身長および体重との相関(N=740)については,身長との相関(HALがr=0.424,NWがr=0.392,ともにp<0.001)の方が,体重との相関(HALがr=0.209,NWがr=0.286,ともにp<0.001)よりも良好であった。大腿骨頸部骨折者と年齢および身長を一致させた対照者との予備的な検討(N=10)では,骨折者の大腿骨頸部のBMD(0.455±0.117g/cm^2 vs.0.543±0.097g/cm^2)が低く,HAL(9.49±0.32cm vs.9.18±0.55cm)が長く,NW(5.05±0.32cm vs.4.88±0.26cm)が長い傾向を認めた。 今回の検討から,大腿骨頸部骨折の発症要因に近位部のGeometryが関与している可能性が示唆された。今後,大腿骨頸部骨折の多数例を対象とした比較,検討が期待される。
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