Research Abstract |
我々の研究によると,血中バイオプテリン値は,健常者に比してうつ病患者で有意に上昇していることが認められたが,健常者の血中バイオプテリンを変動させる因子が全く検討されていないため,その解釈に問題を残した.そこで精神的ストレスが血中バイオプテリン濃度に与える影響を調べるため,あらかじめ充分な説明を受け,本人が進んで協力を申し出た,20才以下,40才代,および60才以上各12名(いずれも男女同数)の,計36名の健常ボランティアを対象に,うつ病と関係が深いとされる抑うつ親和性性格の有無をみる簡単な心理検査の後,精神作業負荷として内田=クレペリン精神作業検査法を,一般的な形式で施行して,精神作業負荷直前,直後,30分後,60分後,2時間後,および24時間後の計6回につき,対象者の血中のバイオプテリンの濃度を測定し,その変動を観察した.血中バイオプテリンの定量は,福島=ニクソンの方法に基づいて行った. その結果,血中バイオプテリン濃度は,60才以上の群をのぞき,負荷終了30分後から軽度に上昇し,1時間後には負荷前の値に戻っていたが,抑うつ親和性性格者に限ると,負荷直後から上昇し,2時間後にもこの上昇が持続していた.またこのような変化に男女差は認められなかった.このように精神作業負荷が血中バイオプテリンを上昇させ,また抑うつ親和性性格者においてこの上昇が大きいということは,うつ病患者の血中バイオプテリンの上昇に,精神的ストレスが関与している可能性が示唆され,うつ病とストレスとの関係が注目される.しかしながら今回の精神作業負荷による変動は一時的なものであり,うつ病における変動とは機序が異なるとも考えられる.以上については,平成7年山形での第17回日本生物学的精神医学会において発表予定であり,今後症例数を増やしてさらに検討を加えた上で,論文にまとめる予定である.
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