Research Abstract |
実験動物にはビ-グル成犬3頭を用い,下顎両側前臼歯部(P_2〜P_4)および第1後臼歯(M_1)を抜歯した.抜歯3カ月経過後,抜歯窩の治癒を確認して,粘膜骨膜弁を剥離し,骨面を露出した.次いで,長さ6mm,幅3.3mm,深さ4mmの人工骨欠損部を左右2つずつ形成した.骨欠損部のうち3箇所には0.45μmの気孔径を有する四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製の膜を被覆し,残る1箇所は膜を被覆せずに粘膜骨膜弁を戻し,縫合した.なお,術後8,16,24週目前日に骨ラベリング剤を投与した.膜を被覆した実験部位のうち,2箇所は術後8,16週目に膜の撤去を行い,再度縫合処置を加えた.残りの1箇所は膜を留置させたまま24週目まで放置した.術後24週経過した時点で,被験部顎骨を採取した.通法に従い,非脱灰研磨標本を作製し,マイクロラジオグラム像,ラベリング像ならびに染色所見をもとに組織学的な検索を行い,以下の結果を得た. 1.新生骨の形成量は術後24週まで膜を留置した部位で最も多く,次いで16週目,8週目に膜の撤去を行った部位の順であり,膜を被覆していない部位では陥凹した状態で新生骨が形成されていた. 2.新生骨の成熟度は膜を被覆していない部位,8週目に膜の撤去を行った部位では既存骨とほぼ同様な高い成熟度を有しており,16週目に膜の撤去を行った部位で成熟傾向にあり,術後24週まで膜を留置した部位ではトルイジンブルーに濃染した新生骨が認められ,成熟度の低い様相を呈していた. 3.骨ラベリング所見より,術後24週まで膜を留置した部位では,実験期間終了前日にラベルされた骨が骨髄側にのみわずかに存在することから膜方向への骨形成は活発でないことがうかがえた. 以上のことから,組織誘導再生法(GTR法)は期待しうる骨増生が得られる反面,骨膜の遮断により骨成熟が遅延される傾向にあり,骨成熟過程に骨膜の関与が推測され,膜方向への骨形成がほぼ終了した時点で速やかに膜を撤去した方が臨床上確実な術式となりうることが示唆された.
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