新潟気象台のデータでも確認されたが、新潟の気候は縦に長いクリモグラフの形、すなわち夏、冬とも相対湿度がほぼ70%以上ある年間多湿の地域である。こうした地域特有の気候にあった住まいは、近年の画一、合理化された住宅建築ではみられなくなっている。この地域の住宅は、全国平均に比べ一戸建住宅が多く、延べ面積で約1.4倍、敷地面積で約1.2倍大きい。また、新潟市とその周辺での住宅増加率は高く、冬の気候の特色から、高気密・高断熱性住宅に対する関心も深い。こうした住居と年間多湿気候との関係をみるために、一般住宅内での微気候変化と特定住居内での被験者実験による住環境の評価を行った。 一般住宅の室内の温湿度や風や動きを購入したクリモマスター6521(日本カノマックス(株))で連続的に測定し、データをコンピュータに転送して、周波数解析によりゆらぎを検討した。温度の揺らぎは異なる暖房方式による室内温度変化の違いをはっきりと示した。室内湿度も揺らいでいるが、暖房の影響があると考えられる。風の揺らぎは1日ごとにみられたが、0.1m以下の非常に小さいものであった。 暖房方式をかえた被験者による室内熱環境の評価は、購入したスキャナボード、ユニットを手持ちのデータロガーに組み込み、室内気候や被験者の皮膚温、衣服気候の多点の温度と湿度の繰り返し測定によって検討した。暖房機器のない場合、ガスによる輻射暖房、カーペットによる輻射と伝導による暖房の3種の測定では、室内の垂直、水平方向の温度分布が異なり、身体各部位の皮膚温が異なって、感覚に影響を与えていることがはっきりと示された。室内の温熱変化だけでなく、被験者の生理変化をとらえることが住環境の評価をするうえで重要である。
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