Research Abstract |
1.研究目的:筋や骨の退行性変化および廃用性萎縮が「寝たきり老人」発症の誘因の1つで,とくに女性において顕著である。加齢にともなう退行性変化に加えて,日常活動量の加齢による減少が廃用性萎縮を惹起している。本研究では運動習慣を有する女性(EX群)の体力(最大酸素摂取量;VO_2max)、骨密度,筋量および血清脂質濃度(総コレステロール;TC,HDL-C,中性脂肪;TG)を調べ,運動習慣がない者(Sed群)と比較した。 2.対象および実験方法:対象は20〜76歳までの健康女性165名で,予め本研究の主旨,内容等の説明をうけ承諾した者であった。1回30分以上,週2回以上の運動を2年間以上継続している者をEx群(n=82),他をSed群(n=82)とした。VO_2maxはトレッドミルによる負荷漸増法で,全身および部分骨密度(BMD),脂肪量(FTM),除脂肪量(LTM)はルナ-DPX-Lで測定した。血清脂質(TC,HDL-CおよびTG)濃度は全自動分析装置(TBA-80M東芝)で測定した。 3.結果,考察および結論:VO_2max(=57.0-0.4×年齢;r=-0.490)およびHRmax(=218.5-1.1×年齢;r=0.727)は加齢とともに減少した。VO_2maxはSed群に比しEx群が有為に高値であったが,HRmaxには差がなかった。VO_2maxは年齢の他にLTMと高い関連があった(r=0.675)。一方,全身又は部分BMDは年齢とともに減少した(r=-0.527)が,0.7g/cm^2以下の例はみられなかった。また,Ex,Sed群間に有意差はなく,年齢の他に体重との相関が高かった(r=0.495)。VO_2max(ml/kg/min)と脚BMDとの相関が最も高く(r=0.395),骨盤BMDとは最も低かった。血清TG,TCおよびLDL-Cは加齢にともない増加した。Ex群のTG,TC,LDL-Cがやや低値を示し,HDL-Cは高値傾向にあった。Ex群は有酸素性作業能に優れ,血清TC,LDL-Cが低くHDL-Cが高かったことから習慣的運動は心臓・脳血管系障害のrisk factor除去に貢献することが示唆される。BMDは年齢と体重の影響を強く受け,運動の影響は顕著ではなかったが,VO_2maxと脚BMDとの相関が高く,習慣的運動もBMD増加に貢献すると思われる。
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