Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 1994: ¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
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Research Abstract |
生体内エネルギーとして必須なATPを合成するATP合成酵素をモデルとして複数サブユニットからなる酵素の機能発現と構造形成の機構を明らかにする目的で、以下の3つのアプローチを行い、新しい知見を得ることができた。これらの成果は5編の国際誌に論文として発表し、高い評価を得ることもできた。 (1)ATP合成酵素の機能欠損変異株からの機能回復もどり変異の解析:触媒部位を有するβサブユニットの174残基がセリンからフェニールアラニンに変異すると機能が失われる。この失われた変異の機能を回復させる第2の変異を解析したところ、295残基のアラニンがプロリンに変化する事が見いだされた。この第2変異単独でも機能が失われる。今回この295がプロリンに変異したものから、機能戻り変異を分離し解析したところ140,159,166,171,172残基に第二変異が認められた。これらの事実は、174残基近傍と295残基近傍の酵素機能発現における構造的機能的連携が存在することを示唆している(発表論文;BBA,(1994)、1187,p67-72)。(2)モノクローナル抗体をもちいた一次構造と立体構造の相関解明;αとβサブユニットに対するモノクローナル抗体を分離した。これらの抗体のエピトープとなる残基を新しい方法を開発して、決定できた。βのアミノ端41から45残基目付近を認識する2種の抗体は、本酵素の試験管内分子集合を阻害する。またエピトープ残基の変異により酵素分子集合が異常になる。この変異の戻り変異も併せて解析しこのアミノ端側と機能的に近傍するβ218残基およびα111残基を同定した(発表論文;JBC,(1994)269,4227-4232,FEBS Lett.,(1994)344,187-190,ABB,(1994)312,317-325)。また、αサブユニットに対する抗体2種について、ATPase活性を上昇させることが明らかとなった。このエピトープ残基はこのサブユニットのカルボキシ末端に位置する。このエピトープ残基のうち456番目のロイシンがプロリンになった場合、抗体が存在しなくても活性の上昇が認められた。この残基を含むアルファヘリックスの重要性が指摘された(発表論文;ABB,(1995)印刷中)。(3)試験管内再構成系を用いた解析:試験管内でαβγサブユニットを混ぜATPase活性を再構成させる系を用いて、この系にαおよびβサブユニットの部分ベプチドを導入し、分子集合を阻害する断片を同定した。この結果ベータの中央部分に分子集合に必須な部分が存在することを突き止めた。 以上の知見は、ATP合成酵素の分子集合と機能発現に必須な構造を明らかにするのみではなく、新たに開発したこれらの方法自体が、他の高次構造を有する酵素の構造と機能の相関解明に役立つものと考えられる。
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