神経伝達におけるアデノシンの興奮作用機序とその生理的意義の解明
Project/Area Number |
06680811
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
神経・脳内生理学
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 安弘 神戸大学, 医学部, 教授 (40073069)
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Project Period (FY) |
1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 1994: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Keywords | 上丘神経伝達 / アデノシン / アデノシン受容体 / 興奮作用 / マイクロダイアリシス / グルタミン酸放出増大 / 記憶障害改善薬の開発 / 長期増強(long-term potentiation) |
Research Abstract |
長期増強(LTP)現象は、記憶形成の基礎過程であるシナプスの可塑性として注目されているが、我々は視覚系の中継核である上丘において顕著なLTPが惹起されることを世界で初めて報告した(1990)。さらに上丘切片を用いたin vitroの系で生体内因性物質であるアデノシンの投与がLTPと同様な現象を起こすことを明らかにした。本発明ではin vivoラットを用い、アデノシンおよびその関連物質が上丘においてLTP現象を誘発しその発現に視神経-上丘投射線維の神経伝達物質であるグルタミン酸放出の増大が関与していることを明らかにした。 その具体的成果として (1)In vivoラットで視神経刺激によって上丘浅灰白質層の浅部で後シナプス性の場の電位C_2波(潜時4〜6msec),深部でC_1波((潜時1.5〜2msec)が記録されるが、これらの電位はキヌレン酸(5mM)DNQXで抑制されグルタミン酸作動性であることが示唆された。 (2)記録部位へのアデノシン(10μM),A_1受容体アゴニストCHA(100nM)、A_2受容体アゴニストCGS21680(10nM)の微量注入でC_1、C_2波ともLTP発現と同様の時間経過で増大した。 (3)細胞外の内因性アデノシン濃度を高めるためアデノシンデアミナーゼ阻害薬であるEHNAを皮下に注射(5mg/kg)すると、電位記録部位へのアデノシン投与と同様なLTP様現象が上丘神経伝達に惹起された。 (4)細胞外アデノシン濃度を高めるためアデノシン輸送の強力な阻害薬であるジピリダモル(30μM)、あるいはNBI(10μM)を微量注入した場合にもC_1、C_2波の増大が観察された。 (5)アデノシン代謝の中でL-adenosylhomocysteineを形成してアデノシンを不活性化するL-homocysteine(10μM)の前処理によって、アデノシンの興奮作用は抑制された。 (6)マイクロダイアリシス法、高速液外クロマトグラフによって上丘浅灰白質層に放出されるグルタミン酸濃度を定量すると、アデノシン投与によってグルタミン酸放出はもとの2倍にも達した。 本研究において、in vivoの系においてもアデノシンおよびその関連物質が神経径-上丘浅灰白質層でLPT様現象を誘発することは重要な所見である。LTPがシナプスの可塑性として記憶形成に関与している可能性は広く認められており、シナプス部位でのアデノシンの濃度あるいは受容体の変容を介し、LTP形成を促進する機構が今後明らかになればアデノシンおよびその関連物質が臨床的な記憶障害改善薬の開発にも役立つ可能性がある。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)