Research Abstract |
大脳皮質は6層からなる層状構造を有し、各々の層に属するニューロンは特定の脳部位に軸索を投射している。これまでの研究から、標的細胞から放出される拡散性の分子が特定の皮質ニューロンの軸索伸長を促すことが提唱されているものの、拡散的に働くポジフイブな細胞間相互作用だけで神経結合が形成されるかどうかは定かでない。実際、昨年度の研究で本来上丘に投射しない2/3層ニューロンの軸索が上丘組織片によって排斥されることを見出した。本年度は、この2/3層ニューロンの軸索伸展が排斥されるメカニズムを解析した。 大脳皮質切片,上丘組織片を新生及び胎生期のラットを取り出し、皮質-上丘、皮質-皮質の共培養を作成した。培養4-6日後に共焦点レーザー顕微鏡でDiIで標識された軸索成長の様子を間欠的に追跡した。皮質-上丘の共培養においては、浅層部から発する軸索(n=5)は皮質深部を一定したスピード(30-70μ/hr)で上丘の方向に伸長したが、1例を除いて全て皮質と上丘の境界部を越えることはなかった。その4例の内1例は境界部付近で一定した速度でUターンしたが、残りの3例はその境界部付近で急に軸索伸長を停止した。このとき成長円錐は顕著に退縮していわゆるコラプスを示した。一方、皮質-皮質の共培養では浅層から発した軸索は全て(n=7)一定した速度で皮質深部、さらに境界部をも通過してもう一方の皮質組織片内に侵入した。 この実験結果は、上丘に存在するコラプス活性を有する因子が2/3層ニューロンの軸索を選択的に排斥することを示している。また、この活性が他の脳幹部位においても存在することと考え合わせると、大脳皮質以外の領域に、2/3層ニューロンの軸索を排斥する分子が存在して、2/3層からの軸索投射が皮質下に及ぶことを阻止することによって皮質内に閉じ込める可能性が示唆される。
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