Research Abstract |
1.CORESの自然言語処理システムへの拡張 (1)概念間の意味的関係を類似関係ノード,統語的関係を時間関係ノードとして表現し,関係自体にも属性や次に述べる活性度を持たせた.(2)人間に記憶容量があることを模してCORESの探索の範囲を限定するために,概念及び上記2種の関係ノードの活性度が,処理されるごとに,一定範囲内だけ,かつ,近傍ほど高くなるよう設定した. 2.代名詞・省略語・予測処理の実現 (1)代名詞 曖昧代名詞を材料としたプライミング実験によって,代名詞の直後には語彙情報と近接性に基づいて一旦すべての候補が活性化され,文尾の動詞の後で正しい指示語だけが活性化されることが明らかとなった.そこでCORESに,まず語彙属性を結ぶ類似関係ノードと,時間的関係ノードの活性度によって,指示語の候補を上げ,動詞の後に動詞からの類似関係ノードをもとに候補を絞り込むという早期意味解析を行わせたところ,シミュレーションと実験結果はよく一致した.(2)省略語 再認実験によって,まず統語的欠落によって省略部分が同定され,次にその部分に意味的に適切でかつ活性度の高い概念が補われることが明らかとなった.そこでCORESに,時間関係ノード,類似関係ノードと概念活性度を順次用いて概念を補完させたところ,実験結果を再現することができた.(3)予測 プライミング実験によって助詞と先行概念の意味(文脈)が予測の促進要因となっていることが明らかとなった.そこで,助詞を介した時間関係ノードの活性度と類似関係ノードを伝播する概念活性度が総合的に最も高い概念をCORESに予測させた結果,実験結果を再現できた. 以上,こうした認知科学的アプローチによって,これらの課題の人間の処理プロセスを明らかにできたと同時に,CORESを人間に極めて近い方法でこれらを解決することができる自然言語処理システムに発展させることができた.
|