Research Abstract |
1.保育園において,18か月男児の観察を行い,主にそのエピソード分析を実施した。本研究で当初目的とした他児とのふり遊びの共有そのものは1歳後半ではそう多く観察できなかった。それに近いものとして,絵本の食べ物をつまんで他の1歳児の口元に差し出すという行為があった。ただし,差し出された側もためらう様子をみせるなど,ふりの意図をくぐらず行為そのものに反応しているという性質のものであった。また,そのすべてが笑いなどのメタサインの伴わないものであったのも特徴的である。 この時期,この男児は他児にかみついたりつきたおすなどいわゆる「問題行動」が指摘されていた。しかし,上記のような制約をもったふり遊びであれ,結果として一定の共有関係が作られ他者との葛藤において緩衝作用をふり遊びが持っていたといえる。従来,ふり遊びは象徴機能の発達という側面から検討がされてきているが,このように日常生活における他者との関係の中で果たす役割からさらに検討する必要が明らかになった。 2.障害児通園施設において,「自閉的傾向」と診断された女児2名を参加観察した。うち1名は観察期間ふり遊びとみなされる行為はみられず,もう1名において保育者のモデリング後に部分的にふりの行為で応じることが観察できた。さらに,後者の事例では,大人をからかうような(保育者のことばによれば「大人にちょっかいをだす」)対人関係の質の変化があわせて確認できた。今回,これまでの研究を概観して,こうしたからかい行為にも,自分の行為と他者の反応の随伴関係を再現する「道具的からかい」と他者にある心的状態を作ることを意図した「他者の意図をくぐったからかい」の2つのレベルがあるという考察も行った。自閉症児において観察されるからかいが,どのレベルのものであるかはさらに検討を要するところである。
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