Research Abstract |
就学前後の2年間にわたり,子ども達の読み能力の熟達過程を縦断的に検討した。昨年度(1993年度)は,大阪府下の公・私立幼稚園児,および公立保育園児70名を対象として,夏,および冬に個別実験を行った。これらの子ども達は次年度に同一の公立小学校に就学する予定の子ども達であった。本年度はこうした子ども達,つまり,大阪府下の公立小学校の1年生を対象として,夏,および冬の2回,読みに関連する諸能力を調べた。従って,本年度科学研究費補助金の援助のもとに行われたのはこれら一連の縦断研究の後半部分にあたるものであった。 子ども達に行った課題はそれぞれの時期ごとに若干異なるが,大きく2つのカテゴリに分類することが出来る。ひとつは文字の読み,及びその効率性に関するものである。つまり,子ども達がどの程度効率よく(流暢に)文字を符号化出来るようになるのか,ということである。ふたつめのカテゴリに属する課題は,符号化が行われた後の文章の処理の効率性に関わる課題である。より具体的に言うならば,言語的な情報が作動記憶内でどの程度効率的に処理されているのか,また,それを規定する要因が発達的にどの様に変化するのかを明らかにするための課題であった。 主要には次の様な結果が得られた。(1)いずれのカテゴリの課題も子ども達の読み能力と密接に結びついており,(2)文字の読みの効率性は実際に文字が読めるようになってからの期間を反映する。少なくとも文字が読めるようになって1年間はそれが文章の理解能力を制約するものとなっている。(3)それに比べると,文章の処理の効率性は文字の読みの習得時期との関連性はうすく,調査期間を通じて一貫して読み能力を規定するものとなっていた。
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