Project/Area Number |
06710132
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
社会学(含社会福祉関係)
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 秀一 明治学院大学, 社会学部, 専任講師 (00247149)
|
Project Period (FY) |
1994
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
|
Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1994: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
|
Keywords | フェミニズム / ジェンダー / 女性 / 生殖 / 生殖技術 / 再生産 / 家族 / 性 |
Research Abstract |
今年度の研究活動においては、「新しい生殖技術」研究の前提をなす作業の一環として、妊娠中絶をめぐる倫理的・社会的問題について考察を深めることに主眼をおいた。これは1991年に発表した拙論「女性の自己決定権の擁護」に対して、新たな視点からの反論が加えられたことを受け、その誤解をただし、生殖技術全般に関する議論につきものの陥穽をあらかじめ明らかにしておく目的で行われたことである。具体的には、(1)受精の瞬間=生命権の「主体」たる「人間」の成立、という発生観の恣意性、(2)妊娠中絶に関わる判例における「期間規定」「適応規定」という二分法の不徹底性、(3)生殖倫理に関わる男女の権利の非対称性、(4)技術水準による「倫理」の絶対的被制約性、等を主要な論点とし、旧論を補強した。この論を構築する過程で、胎児を受精の瞬間から生命権の主体として認めるプロ・ライフ的論理の根底的な曖昧さと政治性とがより明らかになった。さらに今後の展開に資する点としては、法学的議論において、女性の自己決定権がしばしばJ・ロック以来の「自己身体の自己所有権」という論理の延長上で語られることの不十分さを浮かび上がらせることができたと言える。すなわち、1960年代以降の新しい女性開放運動が主張し、近年では女性の「生殖に関わる健康と諸権利」という思想に結実してきた内容は、身体の自己所有ではなくむしろそうした発想が前提としてきた心身観を見直し、所有とは異なるあり方として自己/身体の存在を捉え直そうという提言をその核心においているということが明確に認識されたのである。これは今後、胎児のみならず受精卵や生殖細胞の倫理的地位を考えるにあたっても、所有論を超える人権論の構想の原点として、極めて重い意義を持つ論点であろう。
|