Research Abstract |
1.研究の方法 本研究では,明治期長野県の小学校における学年学級制の定着に関し,国および県レベルの法規,長野県内の小学校約100校の小学校誌(沿革史),および日野尋常小学校関係史料(中野市立図書館所蔵)の分析を行った。 2.研究の成果 学年学級制の制度化の前提条件として,就学年令の統制に関する歴史的過程の解明を試みた。その結果,明治前半期では就学年令および就学時期に相当のばらつきがあり,その統制が政策的な課題となっていたこと,また,およそ明治20年代後半にはそのばらつきが縮小し,徐々に就学年令と就学時期の統制が厳密化され,定着していったことが明らかになった。さらに,就学年令の統制は子どもの心身の発達に注目する学校衛生学的観点がら正当化されたが,近代学校の成立そのものが子どもの生活における「遊」の段階と「学」の段階を分断し,子どもの発達への注目を促したことを明らかにした。 また,日野尋常小学校の学校日誌等の分析を通じて,学校年度および学年暦の制度化の歴史的過程についても明らかにした。そこでは,明治前半期の試験を区切りとする個別的な時間サイクルが,学校年度の制度化と定着,学校行事の定着,進級試験の廃止などを通じて,ほぼ明治30年代になると4月1日から3月末日をサイクルとし,学期や学校行事によって区切られる学年暦が定着してくることが明らかになった。 そのほか,長野県内の小学校における学校規模と学級編成の変遷等の分析を行った。
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