ヴァルター・ベンヤミンにおけるパサージュ論の構造解析
Project/Area Number |
06710304
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
独語・独文学
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
古屋 裕一 岐阜大学, 教養部, 講師 (10229130)
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Project Period (FY) |
1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Budget Amount *help |
¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1994: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | パサージュ / ベンヤミン / 媒質 / Fr.シュレ-ゲル |
Research Abstract |
本研究の成果として挙げられるのは、拙論「近代の幼年時代(その一)」(「ドイツ文学における〈批判〉の展開」所載)「近代の幼年時代(その二)」(「岐阜大学教養部研究報告」第32号掲載予定)のなかで述べた、次のような点である。1.パサージュ論が扱う様々なテーマ群(パサージュ、広告、流行品店、万国博覧会、ガス灯、パノラマ、商品等)が、いずれも近代市民社会の幼年期における労働者階級のユートピア的憧憬を表現するものであると同時に、そのことごとくが、ベンヤミン前期の「神話的暴力」にも通じる商品のモード的循環運動が体現しているような、産業資本主義的支配装置としての物象化機構へと転じてゆく両義性をもつものであることを、個々の断片群に基づいて明らかにした。2.したがってパサージュ論の基本構造は、近代の物象化機構を批判・破壊することによって、この近代の幼年期の憧憬とその物象化傾向という両義性を孕んだ領域を、街路-室内という二項対立的構図が機能しなくなるパサージュが体現しているような「夢の領域」として、様々な事物のうえに開示し、さらにはそこからの覚醒、近代のユートピア的可能性の救出を目指す、弁証法的移行領域という構図をとることを明らかにした。3.そしてこのような弁証法的移行領域というベンヤミン後期の〈パサージュ〉の概念は、ベンヤミン前期の諸論文に共通する思考型としての〈媒質〉という概念と通底するものであることを明らかにした。なぜなら、媒質もまた、通俗的惰性態としての否定層を批判・破壊することによって、神話的暴力の渦巻く両義的な媒質的展開領域を開示し、その展開の極限値において事物の救済を目指す、弁証法的移行領域という構図をとるからである。本研究は以上のような形で、ヴァルター・ベンヤミンのパサージュ論の基本構造を示すとともに、ベンヤミン後期の〈パサージュ〉概念と前期の〈媒質〉概念との類似性を示すことによって、ベンヤミンの思想を統一的に解釈する可能性を示した。
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Research Products
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