Project/Area Number |
06720013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
International law
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
淺田 正彦 岡山大学, 法学部, 助教授 (90192939)
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Project Period (FY) |
1994
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1994)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1994: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 化学兵器 / 軍縮 / 検証 / 査察 |
Research Abstract |
本研究では、化学兵器禁止条約の最大の特徴である検証制度を取り上げ、その意義と問題点について検討を加えた。まず産業検証についていえば、この制度は、軍縮条約であるにも拘らず、兵器そのものでも軍事施設でもない純粋に民生用の産業施設に対して検証を実施しようとする点で、これまでの軍縮条約にない画期的な試みである。しかし、産業秘密の保護の観点から、査察員による産業秘密の漏洩の可能性に大きな懸念がもたれる。この点について、条約では、秘密漏洩の査察員に対する懲戒処分を定めるが、査察機関自身は査察員の秘密漏洩に責任を負わないとされ、その財産的価値の大きさから問題が残る。いかなる対策がありうるのか検討を要する。 つぎに、条約違反の疑惑に対して実施される抜き打ち査察については、(1)査察対象が限定されていないだけでなく、(2)基本的に締約国は査察を拒否できず、(3)査察に要請・受け入れのいずれにも回数制限が設けられていないという点で、まさに画期的である。これまでも抜き打ち査察を定める軍縮関連条約は見られるが、そのいずれにも何らかの形で制限が加えられており、実効性に問題があったからである。他方、化学兵器禁止条約の抜き打ち査察制度は、それが査察対象を特に限定していないため、住居不可侵・令状主義などの憲法規定との関係が問題となる。この点については、条約では、締約国の「憲法上の義務を考慮して」最大限のアクセスを認めるとされるが、この規定の解釈によっては、抜き打ち査察制度自体が骨抜きにもなりかねないし、他方で過度な査察は憲法問題を生ずるというジレンマがある。また、締約国に拒否権がなく、回数制限がない点も、査察の効果の点では評価できるが、査察権濫用の危険と、その結果としての査察機関の財政への負担といった問題とも背中合わせであり、この点でもジレンマがある。
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