Research Abstract |
これまでに,環境分析用産業連関表の1985年を完成させた。産業連関表とは,日本全体の経済活動を406部門にわけて,それらの間の中間財取引を明らかにした統計表であるが,環境分析用産業連関表ではさらに,各部門で消費されたエネルギー消費量とそれによるCO2排出量の推計をつけ加えた.これによればある経済活動が直接にばかりでなく,さまざまな取引活動を通じて間接的に引き起こすエネルギー消費やCO2の排出量を計算することができる。 これまでにこの表を用いて日本の生産・消費活動がどのようなエネルギー消費やCO2誘発を引き起こしているのか,省エネ住宅や高炉セメント利用などの技術がCO2の排出にどのような総合的効果を持つかを分析してきた。その結果,われわれの日常生活がそれとは気づかぬさまざまな側面で多くの環境負荷を持ち得ること,小さな技術改善の積み重ねが環境に重要な影響を与えることを,具体的,定量的に確認することができた。 今年度はさらに,これらの研究を時系列的に行うために環境分析用産業連関表の1990年表の作成にとりかかった。1990年表の推計では,1985年表での経験をふまえて表の形式や推計方法等に改善を加えた.3月末までには第1次的な推計が完成の見込みである。 また,経済統計としての環境分析用産業連関表の結果を工学的な情報と結び付けることによって,製品のライフ・サイクル・アセスメント(LCA)について具体的な検討を加えようと現在研究中である。具体的には,自動車についてその生産工程と使用・リサイクル過程における環境負荷を総合的にかつ詳細に計算する手法を検討している。 また国際的な環境分析への試みの第1歩として,日中の環境分析にもとりかかっている。まずはじめに,中国側の協力のもとで四川省成都市の経済と環境状況の研究をおこなってきた.その過程で,環境保全と両立した経済発展のパターンについて例示的考察を行うことができた.今後は中国東北部(瀋陽市)についても研究を拡大していく予定である。 また,来年度は世代間のライフスタイルの違いが環境へ及ぼす影響について掘り下げていく予定である.
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