Research Abstract |
今年度は,平均値理論におけるAtkinsonの方法の研究を中心課題としたことは計画通りであるが,当初の主目的であったHurwitzゼータ関数のパラメーターに関する2乗平均については前年度の研究の若干の整理にとどまり,それよりも,思いがけない方向へのAtkinsonの方法の発展という成果を得た.そのひとつは,ζ^2(S)の近似関数等式の残余項の2乗平均についての木内氏の結果を精密化して,ζ(s)そのものの2乗平均の場合に研究代表者とMeurmanが提出していた予想に対応する結果を,証明しえたことである.もうひとつは,Atkinsonの方法がBarnesの二重ゼータ関数や二重ガンマ関数にも有効に応用できることの発見で,全く期待されていなかった方向への新展開である.この方向は新谷氏の結果を介して,実2次体のHeckeのL関数のs=1での値のある種の漸近式を得るという応用も見出された.また,当初もうひとつの目標としていたζ(s)の誤差項(2乗平均の)の評価についても,これをDirichletのL関数に一般化した形で,σ(=Res)=1/2における本橋氏の結果の1/2<σ<1への拡張が桂田氏との共同研究によって完成した.共同研究の推進や研究成果の学会・シンポジウムでの公表のため,今年度は旅費が相当に必要となり,当初計画していたパーソナルコンピュータの購入を中止して,科研費の大半を旅費にあてる結果となった.
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