Research Abstract |
双曲型空間H^3の中の定平均曲率1の曲面(CMC-1曲面)について,正則なデータを用いてそれを表現するBryantの公式-Weierstrass表現の双曲版-が知られていたが,それから具体的に曲面を構成することは難しい.それは,その表現公式にデータとして与えられる正則関数の幾何学的意味がimplicitであることに起因する.そこで,幾何学的な意味が明白な量であるような量で,双曲的Gauss写像,Hopf微分を用いて曲面を表現することを考えた.実際,これらの量を与えられると,対応するCMC-1曲面全体の集合を決定することができる.さらに,それらの曲面は,(簡単のため完備,全曲率有限の場合に限れば)コンパクトリーマン面上の定曲率1の共形擬計量で,有限個の点に錐的特異点を持つものと1対1の対応が付くことがわかった.この対応によって,完備,全曲率有限なCMC-1曲面で,対称性の高いものが構成できた.これらは,Euclid空間における対称性の高い極小曲面-例えばJorge-Meeks曲面-の双曲的対応物であるが,極小曲面の場合と違い,自己交差を持たないことが有り得る,ということが,数値計算とコンピュータ・グラフィックスによる実験の結果予想できた.これは,双曲型空間におけるCMC-1曲面の,Euclid空間の極小曲面と大きく異なる性質であると考えられる. われわれの構成法における双曲的Gauss写像の役割を観察すると,平均曲率が1でない場合の表現公式に関する示唆が得られる.しかし,この計算を具体的に遂行するには今一つ時間がかかると考える.
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