Research Abstract |
Rを複素平面ともリーマン球面とも異なる任意のリーマン面とする。Rの任意の点をPをとり,Pを含むRの単連結領域D全体のなす族を考える。各Dには,それ自身を独立したリーマン面とみることにより双曲的計量を導入することができるが,その計量がPにおけるRの接空間で最も小さな内積を与えるようなDを求める,という極値問題を考察した。複素平面の単連結な真部分領域に対して,それを単位図の上に等両に写す写像が必ず存在する(リーマンの写像定理)。ある極値問題を解くことによりこのリーマンの写像定理を証明することができるが,前述の極値問題はこの極値問題の自然な一般化である.一般の場合においても極値問題の解は必ず存在し,ただ一つしかないことを証明した。極値問題の解は,R上の有理型二次微分で特微付けられる。これを応用して,解の境界はあまり複雑にはなり得ないことを示した。 この極値問題は,Rの自己等角写像からなす群GがRに真性不連続に作用している場合,次のように変形できる。すなわち,単連結領域Dの族として,Gの非自明な元によるDの像はどれもDとは交わらないようなDの合体を考えるのである。この極値問題においても解の存在と一意性が証明され,解はR上のG不変な有理型二次微分で特微付けられる。さらに,解はRにおけるGの局所有限な基本領域になる,という著しい性質を持つ。特に,Rが単位図のとき,従って,Gがフックス群である,という重要な場合,この基本領域の境界の各成分は単純曲線となす。しかも,これはディリクレ基本領域やフォート基本領域とは一般に異なる基本領域であることも分かった。こうして,基本領域の全く新しい構成法が得られたのである。
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