Research Abstract |
強磁性遷移金属とbulkで螺旋磁性を示すEuを数原子層オーダーで交互に積層した多層膜(人工格子)を作成し,Eu層の磁気転移温度,転移温度以下での磁気構造が人工格子化によってどう変化するかを磁気測定,メスバウアー分光法により研究した. 磁化測定によると,強磁性金属(Fe,Co,Ni)/Eu人工格子の界面付近のEuの磁気モーメントは界面における強磁性層との反強磁性的交換相互作用のため,室温付近でも磁気的にオーダーし,強磁性層の磁気モーメントに対し反平行に結合していることがわかった.一方層内部のEuは,バルクの磁気転移温度(90K)よりやや低い温度で反強磁性相転移を示すことがわかった.4.2Kにおける^<151>Euメスバウアー分光によると,Euサイトにおける内部磁場はbulk値をピークにかなり低磁場まで分布している.この結果はEu層内部の磁気配列が理想的な螺旋配列から乱れていること,界面のEuサイトにおける内部磁場が層内部のEuサイトにおける内部磁場より小さくなっていることを示している.後者の原因としては界面での伝導電子のスピン分極が層内部のそれと異なっていることが考えられる.なお,これまで作成した試料ではEuがbcc(110)配向しており,そのことが螺旋磁気構造の局所的乱れの一因になっていると考えられる.今後,Eu層を介した強磁性層間相互作用のEu層厚依存性を調べて行くうえでも,Euをbulkの螺旋磁気構造の螺旋軸である[100]方向に配向させる努力を続けていくことが必要である.
|