Research Abstract |
As‐カルコゲン系における電子的性質の特異性が系の局所構造とどのような相関を持つのかに着目し、本研究ではAs_XX_<1-X>(X=Se,Te:x=0.571,0.5,0.4,0.333,0.27,0.2)に対し融点直上において中性子回折実験(日本原子力研究所改造3号炉4G回折装置使用)を行い、化学量論組成前後での構造特異性を追求した。 得られた構造因子S(O)における構造パラメータ最小自乗fitting及び部分二体分布関数の導出により、As-Se系では結晶As_2Se_3に見られる共有結合性As-Se bondが全組成において保持されていることが明らかにされた。一方、As-Te系ではAs_2Te_3においてすでにAs-Te bondの配位数が小さくなり、代わって結晶にはないAs-As bondが出現することが示唆された。また、As-Se系ではS(O)の1.3ÅA^<-1>付近のpre-peakが全組成に渡り明瞭に観測されるのに対しAs-Te系では明らかなpeakとしては見えないことから、As-Se系ではAsSe_<3/2>ユニットから成る中距離秩序が保持され、As-Te系では融解と同時に共有結合性As-Te bondの切断が起こっていることが明らかとなった。ラマンペクトルにおいても、As-Se系ではAsSe_<∫/∵>ユニットの振動モード(〜230cm^<-1>)が観測された。しかし、As-Te系においては測定温度が比較的高いことによりAs-As bondに帰属されるバンドの確認はできなかった。また、Se系Te系ともにカルコゲン過剰組成ではAs-X bondに加えて純カルコゲン液体に見られるX-X相関が現れることも明らかにされた。以上の結果から、As-Se系の電子的性質は共有結合性As-Se bondによって支配され半導体的振る舞いを示し、融解と同時に金属的になるAs-Te系の性質As-Te bondの切断及びAs-As bond、Te-Te bondの出現によって特徴づけられるものと考えられた。 本研究結果は、現在、J.Phys.Soc.Jpn.に投稿準備中である。
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