Research Abstract |
非定常カオスのアラン分散について詳細に調べた.アラン分散は,水晶振動子などの周波数安定度を評価するために用いられてきた.フリッカーフロアの発現は周波数の1/fゆらぎと対応する.非定常カオスではそのパワースペクトルがf^<-ν>となる特徴がある.ハミルトン系の相空間には非定常カオスが普遍的に存在するが,ここでは非定常性を示す一次元写像,変形ベルヌ-イ写像を対象に数値計算を行った結果を報告する. 変形ベルヌ-イ写像には2つのパラメータB,εがあり,B【greater than or equal】2.0において非定常性を示す.ε(【greater than or equal】0)は微小摂動である.アラン分散にスケーリング領域とガウス的領域がみられることは以前示した.そしてその境界はO(ε^<-1/β>)で変化するであろうと考えた.(ただしβ=B/(B-1)のこと)今回,Bを0.2刻み,εを1桁ずつ(10^<-5>〜10^<-13>)と細かく変化させて数値的に確かめようとした.時系列を記号列にした場合及び記号列にしない場合両方について行 εを10^<-L>とおけば,スケール則はO(10^<L/β>)と表される.指数L/βについて,まずLに対して線形と仮定しフィッティングをした.極めてよく線形性を示した.そして次にβ依存性を調べたが,β^<-1>ではなくむしろβ^<-γ>(γ【similar or equal】1.65)となった.記号列,非記号列によらず同様の結果であった.非定常領域なので,より長時間(2^<16>以上),かつより多いアンサンブル数でもって確認する必要があると思われる. 非定常領域ではないが,B=1.8で異常性がみられることがあった.記号列のアラン分散において,長時間相関は1.7と1.9との間となるが,短時間での相関がB=2.0以上となるのである.Large Deviation特性でもB=1.8付近はやや理論からずれる傾向があり,互いに関係しているのかもしれない.
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