Research Abstract |
ヘリウムガスを満たした極低温移動管内にイオンを入射し,この入射イオンを凝集核にして成長するヘリウムクラスターイオンの質量スペクトルを四重極質量分析器を用いて測定した.移動管内の電場強度を変えながら質量スペクトルを測定すると,電場が非常に強い場合にはクラスターイオンは全く観測されず,入射したイオンのみが観測される.この結果は,電場が強い場合にはイオンとヘリウム分子の衝突エネルギーが高くために結合を形成できないことを意味している.そこで移動管内を2つの領域に分けて,イオン入射側電場を強く,出口側電場を弱くすることにより,実効的な移動管の長さを変化させる方法を開発した.この手法を用いて,イオンとヘリウム分子の三体結合速度の測定を,主にアルゴンイオンおよびヘリウムイオンについて行った.電場強度を変えながら結合速度定数を測定し,測定結果を零電場に外挿することによって気体温度4Kにおける結合速度定数を求めることができた.ヘリウムイオンに対する測定値は,従来までに報告されている30K程度までの測定値の延長線上にあるとは言難く,極低温領域での測定が更に必要であることを示している.また,電場による反応速度の変化はイオン輸送現象の基本的な問題である「実効温度」とも関連しており,今後とも実験・理論の両面から研究を進めていくことが必要と考えられる.
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