Research Abstract |
深い地震の発生機構を解明する目的で,本研究では,高性能広帯域地震計の地震波形記録を用いて,深い地震の破壊伝播と地震波放射様式について以下の点を明らかにした。 1.水平方向へのすべり伝播:以前の研究で,プレートの自重のためすべり面が鉛直方向に卓越,破壊伝播が鉛直方向に観測されるという考えが指摘されていた。本研究では,1990年に日本の近傍に発生した深さ600km付近の2つの深い地震の震源過程の解析から,どちらの地震についても鉛直方向の破壊伝播の証拠はみられず,むしろ日本に分布する地震計の記録の解析から水平方向へのすべり伝播が確実であることを突き止めた。この結果は,深い地震はすべり面が水平方向に向くような機構ももつこと,深い地震の発生できる領域が水平方向にも広がりを持つことを示した。本結果の一部は,J.Geophys.Res.に公表され,残りの部分は現在論文を執筆中である。 2.震源でのほぼ皆無な体積変化:1994年はきわめて珍しく大きな深い地震(M7〜8)が複数発生した。これらの大きな深い地震は,最近の高性能広帯域地震計観測網ではじめて観測された貴重な地震である。特に,ボリビア下での超巨大深発地震は,通常の深い地震では決して観測されない周期1000秒程度の地震波を励起し,それを用いた本研究での解析が,震源での体積変化がほとんどなかったことを鮮明にした。表面波,実体波の解析結果でも,同様に体積変化の証拠がないことから,深い地震の震源においては,急激なものでもゆっくりとしたものでも,体積変化を起こすような発生機構は考えられないという重要な結論を見いだした。本研究の一部は未だ進行中であるが,ボリビア地震についての結果は,既にGeophys.Res.Lett.に投稿,審査中である。
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