Research Abstract |
この研究では,NMC(米国気象局)の提供する全球気象データを用いて,成層圏極うずの発達から崩壊の過程とその年々変動について調べることを主な研究課題とした.しかしながら,NMCデータのうち特に観測期間の長い北半球解析データの処理を予定通り進めることができなかったので,ここではNimbus 6号衛星に搭載されたPMR(pressure modulator radiometer)と呼ばれる測器の温度データにもとづいて,とくに南半球成層圏・中間圏の季節進行について調べた。 これまでの衛星観測は測定原理の限界から主として成層圏領域を観測対象とするものがほとんどであった.しかしこのPMRは実験的な試みではあるが,高度約20-90kmまでの温度場の情報を1975年6月から1978年6月まで全球的に取得した.下端(50hPa)には気候値の高度場を用い,静力学平衡の関係を用いて高度場を積み上げた.さらにこの高度場にもとづいて帯状平均した地衡風を計算した. このPMRデータを用いた解析から,南半球の秋から春を中心とした季節の成層圏・中間圏における大気循環について以下のようなことがわかった. ・西風ジェットは真冬に向かって強化されるが,7月の終り頃からは徐々に弱まりながら極向き下向きにシフトする. ・さらにそのジェットは2つに分裂する;1つは中間圏に残り,もう1つは成層圏高緯度に位置するようになる. このジェットの分裂と対応してプラネタリースケールの波動の活動性が高まる. 西風ジェットの振舞,あるいは極うずの消長過程は,これまで成層圏領域のみで考察されてきたが,この研究は中間圏まで含めて考えることの必要性を示唆している.
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