Research Abstract |
1.m-およびp-トルニトリルと希ガス原子の1:1会合体について,(1)トルニトリルのメチル基ねじれ振動のポテンシャル解析と,(2)S_0での振動励起状態の寿命のSEP-LIF分光法(SEPで振動励起後,遅延LIF測定で励起された分子種あるいは前期解離生成物を検出する手法)による追跡を行った.備品として購入したコンピューターは,主にねじれ振動の解析に用いた. 2.ねじれ振動の解析:m-トルニトリルと希ガス(ネオン,アルゴン,クリプトン)の1:1会合体のS_1でのメチル基ねじれ振動をホールバーニング分光法で測定し,シミュレーションによりそのポテンシャルを決定した.単量体と3つの会合体中でのねじれのポテンシャルを比較し,より大きな希ガスとの会合体形成でねじれの障壁がより高くなることを見いだした.その原因として,希ガス原子による立体障害と会合体形成によるトルニトリルの電子状態の変化が考えられる.さらに詳細な情報を得るためには,他のトルエン誘導体の会合体で同様の測定を行なう必要がある. 3.S_0の励起振動状態の挙動:p-トルニトリルとアルゴンの1:1会合体を423cm^<-1>の振動にSEP励起後200nsの遅延をとって振動励起種の検出を試みた.単量体ではSEPにより励起された振動状態に存在するトルニトリルが観測されたが,会合体では観測されなかった.p-トルニトリル・アルゴン会合体では,緩和あるいは前期解離が200nsよりも十分はやい速度で起きていることがわかった.この結果は,緩和や解離が遅いベンゾニトリル・アルゴン会合体(1000cm_<-1>の振動を励起後一μsでも,はじめに励起した振動状態に残っている会合体を検出可能)の結果とは対照的である.1000cm_<-1>以下のいくつかの振動状態で,SEP励起後に前期解離生成物の検出を試みたが,検出はできなかった.
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