Research Abstract |
1,2,5,6-テトラチアシクロオクター3,7-ジエン(1,2,5,6-テトラチオシン)には、1,5-シクロオクタジエンと同様に様々な配座異性体が存在すると考えられ、その構造及び反応性に興味がもたれる。本研究ではcis,cis-1,2,5,6-テトラチアシクロオクター3,7-ジエン(1)を合成単離し、X線結晶構造解析によりその構造を明らかにするとともに、その反応性について検討した。 希薄条件下、エテンジチオレートをヨウ素を用いて酸化することにより、テトラチアシクロオクタジエン1を13%の収率で得た。1は黄色の結晶で、室内の蛍光燈に対しても不安定であり徐々に分解してポリマーとなった。また、この反応においては、ジチオレートの三量体2、四量体3などの環状オリゴマーも生成することがわかった。1のX線結晶構造解析を行った結果、8員環はねじれたtwist構造をしていることが明らかとなった。また、他のエネルギー極小値を持つ配座をab initio分子軌道計算により検討したところ1,5-シクロオクタジエンの場合とは異なり、硫黄の孤立電子対が避け合ったtwist構造が最もエネルギー的に安定であることがわかった。この構造は、1のX線構造とよく一致している。また、1の光反応についても検討した。1のベンゼン溶液を光照射(>300nm)したところ、環拡大した2と共にC_2H_2S_2の組成をもつポリマーが主生成物として得られた。
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