Research Abstract |
ポテンショメトリックストリッピング分析(PSA)は,一般に,攪拌溶液中で行われるが,試料溶液の交換の度に攪拌子等の配置が一定せず,濃縮量および酸化剤の電極への到達量が変化するので,再現性のよい測定に熟練を要する.この問題の解決に,圧電振動子(バイモル社BF-301型)を用いるシャープペンシル芯(GRC,ぺんてるHi-Polymer for Pro)振動電極(GRCVE)のPSAへの利用を試みた.自作ポテンショスタットの定電位電解および電極電位測定モードの切り替えには半導体スィッチを用い,PSA操作をパソコン自動制御した.【GRCVE】Cd(II)およびPb(II)をGRCVEを用いるPSAの試験物質に用いた.支持電解質溶液は,10mlの0.1mMHg(II)イオンおよび0.05M硝酸を含む0.1MKNO_3である.攪拌溶液中のPSAにおける遷移時間(τ)は式(1)で与えられている.τ∝t_<dep>(δ_2D_MC_M)/(δ_1D_<Hg>C_<Hg>) (1) t_<dep>は前電解時間,δ_1,δ_2は前電解と溶出過程での拡散層の厚さ,C_M,C_<Hg>は目的金属イオンと酸化剤であるHg(II)のバルク濃度,Dは拡散係数である。同一溶液条件下で,τは10から100Vまでの振動電圧に依存せずに一定であったことから,δ_2/δ_1が一定値に保たれ,GRCVEが拡散層の厚さを制御している。τは,30-1000μMのHg(II)濃度に反比例し,5-600秒までの濃縮時間の増加に伴って直線的に増加し,5×10^<-8>-1×10^<-5>MまでのPb(II)濃度に比例した.これらの関係は,式(1)を満足しているので,GRCVEがPSA用電極として従来法に代わって使用できる.【マイクロセル】GRCVEを,50μl程度の微小量試料のPSAに利用した.自作のシリコンゴム製マイクロセルの外側に窒素ガスを10分以上通気して溶存酸素を除去した。測定毎に溶液を交換した場合,各々の金属イオンに対するτの相対標準偏差は2%程度であり,微小試料を用いて再現性よく高感度に定量可能である.
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