Research Abstract |
溶液内でのポリフィリンの錯生成反応は一般に遅いことが知られており,その反応機構や触媒について数多くの報告がある。しかし,今日まで固-液系でのポリフィリンの錯生成反応について研究した例はほとんどない。本研究では,ニッケル(II),銅(II),亜鉛(II)に注目し,シリカゲル/有機溶媒系で,錯生成の反応速度について検討し,その特徴を明らかにした。 金属イオン(Ni^<2+>,Cu^<2+>,Zn^<2+>)をそれぞれ吸着させたシリカゲル(M-SiO_2)を以下のように調製した。シリカゲルと金属イオン水溶液を,pH5-8,25℃で攪拌した後,シリカゲルを水で洗浄し,120℃で1時間乾燥し活性化させ,M-SiO_2を得た。錯生成反応では,テトラフェニルポルフィン(H_2tpp)のトルエン溶液と,上述のM-SiO_2を25℃で攪拌した。反応速度定数k_<obs>を求めるために,M-SiO_2を連続的に濾過し,濾液の吸光度を測定し,濾液は反応溶液に戻す反応装置を作成した。 金属イオン初濃度やpHを変えて金属吸着量(Q_M)の異なる数種のシリカゲルを調製し,錯生成反応を検討した。その結果,ニッケルでは錯生成反応はほとんど認められないものの,銅,亜鉛では迅速な錯生成が観測された。銅,亜鉛についての錯生成の反応速度は,シリカゲル上のQ_Mに対して1次であり,通常の錯生成と同様であった。しかし,M-SiO_2調整時のpHも反応速度に影響を与えるという特徴が観測された。すなわち,k_<obs>は,特に亜鉛の場合pHの増大とともに単調に減少した。本研究で見出された特異的なpH依存性は,M-SiO_2調整時にH^+がシリカゲルもしくは吸着している金属(II)の化学状態を変化させているためであると考えられる。今後,M-SiO_2の状態分析を行うことでより詳細な反応機構の解明が可能になると期待される。
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