Research Abstract |
NADーリンゴ酸酵素型C4植物キビでは,維管束鞘細胞のミトコンドリアがC4光合成経路に組み込まれており,ミトコンドリア膜間の高い輸送活性が必要とされる.この活性を維持するための様々なトランスロケーターが維管束鞘細胞ミトコンドリアに存在することが予想されている.本研究ではこのうちの2-オキソグルタル酸/リンゴ酸トランスロケーター(OMT)のcDNAクローニングを行った.コードされるタンパク質は,分子量32,000であり,ウシミトコンドリアのOMTと同一のアミノ酸で45%,類似のアミノ酸も含めると75%の相同性があった.そのハイドロパシー図もウシのものと良く似ており,膜を6回貫通していると予想された.OMTcDNAの一部分を用いて作製した大腸菌組み換えタンパク質に対する抗体は,ミトコンドリアの膜タンパク質と反応し,得られたcDNAがミトコンドリア局在型のOMTであることが示唆された。得られたクローンには介在配列を含むものがあり,スプライシングされないmRNAが蓄積していることがノーザン解析においても認められた.OMTのmRNA蓄積量はcDNA全長をプローブとした場合,葉肉細胞と維管束鞘細胞で同程度であったが,3´非翻訳領域をプローブとした場合は維管束鞘細胞においてのみmRNAが検出されたことから,このcDNAクローンは維管束鞘細胞特異的に発現するOMT遺伝子に由来することが示唆された.また,非光合成器官においては僅かな発現しかみられず,葉の緑化過程において他の光合成酵素遺伝子と類似したパターンで誘導されることから,OMTが光合成機能に関与すると共に,維管束鞘細胞ミトコンドリアの機能分化の一要因である可能性が予想された.さらに,このOMTタンパク質の全長を大腸菌内で大量発現させ,効率的に精製を行う系を確立した.精製したOMTはリポソーム中で再構成し,基質取り込みの速度論的特徴やその特異性について解析した.
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