Research Abstract |
日本人およびアジア系集団(モンゴル人,中国のエベンキ族,オロチョン族,アジア由来と考えられるコロンビア先住民)のDNA多型を,PCR法を応用して解析した。 調べたのは,日本人(茨城県および徳島県の2集団),モンゴル人と中国のエベンキ族とオロチョン族である。さらにその由来を考慮するとアジア系といえるコロンビア先住民についても,DNAの変異を解析した。日本人以外の試料はすべて以前の海外学術調査により現地にて入手されたものであり,本研究の開始前には血液試料よりフェノール法により抽出済みであった。 調べた形質は,4種のVNTR(variable number of tandem repeat)および2種のSTR(short tandem repeat-ここでは2塩基単位の反復)である。いずれの実験でもPCR法により変異のある核DNA部分を増幅し,ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により,個体間の変異を検出し,各個体の持つ2つの対立遺伝子(allele)の同定をおこなった。なおVNTRではゲルの染色は臭化エチジウムにより,STRでは銀染色法によった。 VNTRでは,MCT118,YNZ24,DAT1,D4S95の4種とも日本人も含めたアジア系集団では集団間でalleleの分布には大きな差異はみられなかった。しかし,文献によるコーカシアンのalleleの分布とアジア系集団のalleleの分布には大きな差があった。肝型糖輸送担体遺伝子内およびアミロイド前駆体タンパク質遺伝子内のSTRでも,アジア系集団相互では,allele分布に大きな差はなかった。また,それぞれの形質において,各集団で特異的にしかみられないalleleの存在が認められた。 今回の集団はみな基本的に北アジア系であり,日本人もこのグループを形成する一員であることが,DNA多型からも裏付けられたことになる。
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