Research Abstract |
カルコゲン系アモルファス半導体に直線偏光させたバンドギャップ光を照射すると,光学的異方性が生じることが知られている。この現象は、バンドギャップ光が吸収されてアモルファス半導体の構造が変化し、構造が異方的になるためにおこると考えられているが、くわしい機構はわかっていない。この研究では、Ag-As-S系アモルファス半導体に偏光させた光を照射したときにおこる光学的異方性について,定量的に調べた。この系では,Agがイオン化してAg^+になっていることがわかっているので,これまでに研究の対象となっていたAs-S系などとは異なるふるまいをすることが予想された。 AgAsS_2光ドープ膜とAs_2S_3蒸着膜について実験をおこなった。直線偏光させたHe-Neレーザ光を試料に照射し,He-Neレーザを光源とする偏光解析装置で複屈折を測定した。 AgAsS_2光ドープ膜の複屈折は,10^5(J/cm^2)の光照射で飽和に達し,そのときの値はΔn=n||-n⊥〜+10^<-2>だった。ここに,n||とn⊥は,それぞれ照射した直線偏光と平行および垂直な電場振動面をもつ直線偏光に対する屈折率をあらわす。As_2S_3蒸着膜の複屈折Δn=-1×10^<-3>だった。この値は,光ドープ膜とくらべると,符号が反対で絶対値は1桁ちがう。偏光照射によって異方的になったAs_2S_3では,吸収端にも異方性があることがすでにわかっている。この研究では,光ドープ膜の吸収端には異方性はみられなかった。光ドープ膜における光誘起異方性は,これまでに知られているAs_2S_3などの光誘起異方性とは別の現象だと考えられる。
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