Research Abstract |
GaAs(100)基板上にZnSeを臨界膜厚程度の厚さにエピタキシャル成長した試料に,室温においてスクラッチを入れることにより転位を導入し,走査電子顕微鏡を利用したカソードルミネッセンス法(SEM-CL法)により転位を観察した.室温における観察でもわずかに転位が観察できたが,液体窒素フローにより100K程度に冷却することにより,転位の黒色コントラストに改善が見られた.さらに,液体ヘリウムを用いて20K程度まで冷却してみたが,それ以上のコントラストの改善は見られなかった. 本研究では,青色発光II-VI族半導体であるZnSe中の転位の運動を調べることが目的であるため,観察されている転位がZnSeエピ膜中に存在していることを確認することが重要である.そこで,カソードルミネッセンス光を分光し,GaAs基板とZnSeエピ膜からの信号のそれぞれについて像を観察した.その結果,いずれからも転位像が観察された.このため,観察している転位がZnSe中に存在することを確認することができなかった. 上記の問題点は保留して,次に,低温における転位の運動速度を測定するため,100K程度の低温において4点曲げ変形により試料に応力を加えた.しかしながら,非常に小さい応力で試料が破壊されてしまい,転位の運動を観測するには至らなかった.これは,基板のGaAs自身が本来破壊され易いことに加え,試料方位が曲げ応力によって劈開し易いことが原因であると考えられる. 本研究では,ZnSe/GaAs(100)を用いたZnSe中の転位の運動速度測定において上記のような2つの問題点が明らかになった.これらについては,最近良質のバルクZnSe単結晶が作成されるようになったことから,それを適当な方位に切り出したものを試料とすることによって,解決が可能であると考えている.
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