Research Abstract |
本研究は,ミリ波・サブミリ波の波長域における極短パルス光の実現を目指したものである.本年度は,先に提出した研究計画調書および交付申請書に記載した研究計画に従い,以下の項目を実施した. 1.ハイブリッド型TEA CO_2レーザー,トリプル・パス増幅器,遠赤外レーザー・セル(本補助金により試作)からなる実験装置全体の組立・調整を行った.増幅器から得られるCO_2レーザー光のパワーは5MW以上に達した. 2.CO_2レーザーパルスをパルス途中で遮断するためのプラズマ・シャッターを整備した.レンズ間隔の微調整により,シャッターを通過したあとのビームの発散を抑制した. 3.マルチモードのCO_2レーザー光でD_2Oガスを励起する実験を行った.CO_2レーザーにモードロックなどの短パルス化措置が施されていないのにもかかわらず,D_2Oガスの圧力を6Torr以上と高めに設定した場合,パルス幅約3ns(約1kW,波長385μm)の短パルス列が遠赤外レーザー・セルから発生した.レーザーガスにNH_3を用いた場合にも,2nsを割る程度の短パルス出力(波長2.14mmのミリ波を含む)が得られた. 4.プラズマ・シャッターにより,単一モードまたは2モード化されたCO_2レーザー光をパルス途中で遮断し,それにより,遠赤外レーザー・セルを励起した.その結果,数ショットで,遮断CO_2レーザーパルスの立ち下がり時刻に呼応した短パルス出力が得られた. 5.2台のTEA CO_2レーザーを一つの共振器内に直列に並べた新しいハイブリッドCO_2レーザーにより,自発的(受動的)なモードロッキングを引き起こすことに成功した.モードロックされたCO_2レーザーパルスにより遠赤外レーザー・セルを励起すれば,単なるマルチモード・パルスを光励起に用いた場合よりもパルス幅が短いサブミリ波出力が得られるものと期待される.
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