Research Abstract |
夜行性の蛾(moth)の角膜による光の吸収現象(Moth eye 効果)を解明し,その工学的応用の可能性を調べるために以下の研究を行った. 1 Moth eye 効果を光学的に説明するために,Moth eye 効果を起こす蛾の角膜の表面観察を行い,角膜の表面が2次元の周期構造(2次元回析格子)であることを確かめた.そこで,2次元回析格子による波動散乱現象を,Helmholtz方程式に関する3次元の境界値問題として定式化し,この境界値問題に,筆者らがこれまで1次元回析格子の解析に用いてきた数値解法(安浦の方法)を適用した. 2 1で導いた数値解法は,閉曲面(つまり2次元回析格子の表面の1周期)における最小2乗法に帰着するため,その実行には膨大な数値処理量が必要である.そこで,この大型の最小2乗問題を解くために,ネットワーク上のワークステーションを用いて並列・分散処理を行うソフト(パラレルフェア)を科研費により購入した.そして,現有設備(11台のワークステーションによるネットワークシステム)を用いて大型の最小2乗問題が解けるような環境設定およびアルゴリズムの開発を行った. 現在,このアルゴリズムを用いて,2次元回析格子に関する固有値問題(つまり入射波を零としたときの回析問題)を解き,2次元回析格子に励起される表面波の伝搬定数と界分布を求めている.この表面波の伝搬定数と回析波のエバネッセントモードとの伝搬定数が一致したとき(位相整合),光の強い吸収(光共鳴吸収)が発生する.そこで,Moth eye 効果を起こす蛾の角膜の2次元回析格子によるモデル化を行い,先のアルゴリズムを用いて光共鳴吸収を求め,これがMoth eye 効果であることを確かめている.
|