Research Abstract |
本研究は,次世代生産システムの中核加工機能を実現する工作機械に必要となる,新たな加工状態のセンシング技術を確立することを目的として,加工状態を知るための情報源である加工点に着目し,そこで発生する電気的作用の機構解明に関して基礎的研究を行った.具体的には,旋削加工の加工点を対象とし,主軸系モデル及び旋盤をもちいて,工具・工作物間の接触電気抵抗等の測定を行った結果,以下のような有用な成果が得られた. (1)主軸,転がり軸受,軸受ハウジング等よりなる主軸系モデルを製作し,工具・工具物・主軸台間の電気回路中に存在する種々の結合部の接触電気抵抗を測定した。その結果,転がり軸受部での抵抗が支配的であり,工具・工作物間の接触電気抵抗は相対的に小さいことが明らかになった. (2)(1)の結果を基に,切削加工時の工具・工作物・旋盤主軸台間の電気回路において同様の検討を行った結果,転がり軸受部での電気抵抗が大きく,その値には回転数や軸受潤滑状態などが大きな影響を与えることが明らかになった. (3)工具・工作物間の接触電気抵抗を詳細に検討した結果,その値は転がり軸受部より相対的に小さいものの,切削加工時に瞬間的にも0になることはなく,また切削条件や工具・工作物材種の組み合わせ,工具刃先形状に起因する種々の切屑排出状態に対して大きく変化することを確認した. (4)工具・工作物・旋盤主軸台間に電気回路を構成して,工具・工作物間の接触電気抵抗変化に基づく切削状態認識方法を提案し,この方法が,得にびびり振動発生及び切屑排出状態のインプロセス認識に有効であることを切削実験により明らかにした.本方法は,センサとしての設置空間はほとんど必要とせず,他のセンサとの構造的な干渉が少ないため,今後センサフュージョンによる加工状態の総合的認識を実現するうえでも有効であると考えられる.
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