Research Abstract |
研究代表者らの独自の発明に基づく,気-液-液系装置によって,従来その生成が非常に困難であったミリオーダ粒径の中空液滴ならびに固体球殻の連続生成が初めて可能になり,球状機能性液体膜としての応用や,金属カプセルの液相焼結による新材料の開発が期待されるようになった.しかし,中空液滴界面の安定性がそれらの応用範囲を限定してしまう可能性が指摘されていた.本研究は,中空液滴の安定化に関するものであり,中空液滴が有する内側の気液界面および外側の液液界面の非線形波動を理論ならびに実験の両面から明らかにしようとしたものである.この研究によって,中空液滴を崩壊させる,あるいは,同心球化を促進するような外力による振動成分を同定することが可能となり,安定な同心球状中空液滴の連続生成に必要不可欠な知見を得ることができた.さらに,申請者らは独自の発明に基づく気-液-液系中空液滴生成装置を保有していたので,種々の流動条件における実験結果との厳密な対比により,ここで開発した理論モデルの妥当性の検討を行い,本研究結果が十分実用に供することを実証した.このような知見に基づき,今後改良される気-液-液系装置を用いれば,生成される中空液滴ならびに固体球殻は均一な球状膜を有し,等方的で高い機能性を有することが期待される.本研究は,気-液-液系装置にのみ利用可能なものではなく,NASAによる二重鉛管を用いた球殻生成装置,化学反応を利用したマイクロカプセルの生成技術,非線形波動現象および赤血球の理論モデルなどに利用することができ,流体科学における先端技術分野への応用を可能とするものである. なお,研究代表者は,平成7年2月,従来行ってきた中空液滴の生成とその応用に関する研究が評価され,財団法人井上科学技術財団より研究奨励賞を受賞した.
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