Research Abstract |
表面上で蒸発・凝縮を伴う二円筒間の円形クエット流の気体論(分子気体力学)に基づく解析に着手し,気体の希薄度が小さい場合に対する既存の漸近理論の結果(流体力学的方程式系と凝縮相上における境界条件)を用いて流れの様子を調べた.この流れでは,外側の円筒状凝縮相の温度が内側の円筒状凝縮相の温度よりも高い場合に特徴がある.この場合には,円筒と共に蒸気流が回転することによって生じる遠心力が,両凝縮相の温度に対応する飽和蒸気圧の差(従って両凝縮相の近くの気体の圧力の差)を打ち消す向きに働くため,円筒の回転速度が,凝縮相の状態で決まるある値に近づくに従って蒸気の半径方向の速度が零に近づく.蒸発・凝縮流に対する既存の漸近理論では,流速や圧力変化などの流れの諸量を全て同程度の大きさに仮定しているため,ここで生じた,回転速度に比べ蒸発・凝縮の速さが遅い流れは正しく記述できない.(無理に理論を適用すれば,解が存在しない,または解が一意に定まらないなどの破綻が生じる.)古典流体力学からの類推では,この流れでは気体の粘性の効果が重要であろうが,粘性の効果・遠心力・凝縮相における条件を同様に取り入れた精密な流れの理論は本研究でもまだ得られていない. 以上の結果を受けて,現在この流れの数値解析を進めている.流れの不安定性の影響を避けるため,まず外側の円筒が回転する場合を取り上げ,これまでの解析で判明した,既存の理論が破綻する場合に重点をおき,流れの様子を明らかにしていく予定である.
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