Research Abstract |
本研究では,アラキジン酸(C20)とC_<15>TCNQ分子を用い,有極性と無極性の層を持つヘテロ構造LB膜を作製し,その構造と電気的特性についてC_<15>TCNQのみのLB膜と比較し,検討を行った。ヘテロ構造LB膜は,Y型として累積されほぼ無極性となるC20分子を用いたLB膜を下部としZ型として累積され有極性となるC_<15>TCNQ分子を用いたLB膜とした順積層膜,およびC_<15>TCNQを下部としC20を上部とした逆積層膜の2種類について作製した。また,上部および下部電極にはAlを用いた。 まず,これらのLB膜について電流(I)-電圧(V)測定を行い,電気伝導特性について検討した。その結果,IがV^<1/2>に比例することなどから電気伝導はショットキー効果によることがわかった。また,順積層膜では上部に正電圧を印加した順バイアスとその逆の逆バイアスでは,電流値やI-V^<1/2>特性の傾きに大きな違いが現れた。これに対し,逆積層膜では順バイアスと逆バイアスでは電流値や傾きにあまり違いが観測されなかった。これは,順積層膜ではLB膜内にポテンシャル井戸が形成されており,逆積層膜ではポテンシャル障壁が形成されていると考えると説明できることがわかった。 次に,熱刺激電流(TSC)測定を行い検討した。C_<15>TCNQのLB膜には2つのピークが観測され,低温側のピークは双極子の脱分極によるもの,高温側のピークは電荷の巨視的な移動に伴うもので電極からの注入キャリアか可動イオンに起因するものと考えられた。そして,同じバイアス電界に対して,C_<15>TCNQのみのLB膜および順積層膜と逆積層膜でTSCスペクトルの形や電流値の大きさがかなり変化することがわかった。この原因も電流-電圧特性と同様に,ヘテロLB膜内のポテンシャル井戸あるいは障壁によるものと考えられた。
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