Research Abstract |
ディジタル無線通信において,遅延多重波による周波数選択性フェージングの対策として期待される技術の一つにアダプティブアンテナがある.これは不要波にアンテナの指向性の零点を向け,所望波のみ良好に受信するシステムである.このシステムのパーソナル移動通信への適用を考える場合,制御速度,システムに要求される精度,システムの小型化,及び低コスト化が最大の課題である.本研究の目的は,アダプティブアンテナの一形態であるディジタルビームフォーマを基にした次世代のパーソナル通信のためのアダプティブアンテナ技術について研究開発することである.その研究成果は以下の通りである.まず,小型システムのための制御アルゴリズムとしては,同一セル配列型のひとつで,LSI化が最も容易なシストリックアレー方式を基本構成とした.そして,その構成を実現しやすいようにアダプティブアンテナ部の構成として固有ビームスペース方式を採用し,任意形状の平面アレーに導入を試みた.アダプティブアンテナの動作原理としてはディジタル無線に適したCMA(定包絡線アルゴリズム)を用い,それによる種々の特性を調べた.まず,QPSK信号をはじめとする各種定包絡線信号に対する特性の違いについて比較検討を行い,定包絡線性を有していればどの変調方式に対しても良好な干渉波抑圧特性を持つことを示した.次に,周波数利用効率の高い多値変調方式で本質的に定包絡線信号でない16QAM信号に対する干渉波抑圧特性を調べた結果,評価関数を適切に選択切り換えすることにより16QAMに対してもCMAが十分適用可能であることが明かとなった.最後に,到来波の信号の周波数スペクトルに注目した最適化手法を提案し,従来の時間波形に対する最適化手法との比較検討を行った上で,その有効性を示した.今後,室内実験によるより詳細な検討が課題である.
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