Research Abstract |
本研究では,曲げを受ける梁の部材長が変化する時,曲げ耐力がどの様に変化するのかについて,実験値と理論値との比較を行い,理論値を導く為に用いた既存の安全性評価手法の妥当性を検証した.既存の安全性評価手法では,部材長を便宜上ある長さの各要素に分割し,各要素の耐力は完全に独立であると仮定して導いている. 実験は,支点間50cmの建設用断熱材の梁を用い二点載荷を行った。そして,この純曲げ区間長を,以後“部材長"とみなし,2,5,10,15,20cmと変化させ,各100本ずつの曲げ破壊実験より,それぞれの部材長の曲げ耐力分布を導いた.すべての部材長において,曲げモーメントの増加速度は同一とし,この影響を確認する上で,部材長2cmに対しては,異なる増加速度においても100本の実験を行った。その結果,本研究で行った実験の範囲内において,以下のような結論が得られた. 1.部材長の増加にともない,曲げ耐力の分布は,平均値は直線的に減少するが,標準偏差はほぼ一定値となる. 2.曲げ耐力の分布は,極値I型最小値分布のあてはめが有効であり,また,この分布を仮定した場合,各部材長において,既存の安全性評価手法により導かれた理論値と実験値が,ほぼ一致した.この時,便宜上必要となる,互いに耐力が独立と考える各要素の長さは,約2cmとなった. 曲げモーメントの増加速度の影響は大きく,部材長の変化による曲げ耐力分布の変化を実験より求める際には、共通の増加速度を用いる必要がある. 今後の展開としては,より剛性の高い供試体を用い,今年度の実験より長い部材長に対しても,理論上必要な,耐力が独立と考える便宜上の要素長の存在を導き出し,既往の安全性評価手法が成立することを確認したい.
|