Research Abstract |
都市構造,人間活動がそれぞれどの程度ヒートアイランド等都市特有の気候に寄与しているのかを定量化し,さまざまな都市構造及び人間活動変化のシナリオについて,都市の気温に与えるインパクトを評価するため,東京23区をフィールドに局地気象モデルによる数値シミュレーションを行った。都市構造はalbedoや地表面粗度等のパラメーターで,人間活動はエネルギー消費に伴う人工排熱を,建物用途別・季節別・時刻別・エネルギー消費用途別に与え,これらを表現している。ともに25mメッシュ毎の土地利用種・建築階数等についての細密地理情報を用い,1kmグリッド毎に求められた値をファイルから読み込んでいる。夏期においては日中海風が強く,明瞭なヒートアイランドは形成されないが,23時頃にのみ,新宿付近を中心とする小さなヒートアイランドが見られ,周辺との気温差は約1.6℃である。冬期は日射が弱く海風も弱いため,夏期よりも明瞭なヒートアイランドが終日現れ,周辺との気温差は最大で約2.6℃に達する。また20時頃には人工排熱の多い大手町,新宿,池袋に二次的なヒートアイランドが認められる。人工排熱を入れない場合,都市を草原に変えた場合との比較により,季節別・時刻別の地表面被覆及び人工排熱の寄与を求めた。地表面被覆の寄与は夏期・冬期ともに最大約1℃であり,人工排熱の寄与は冬期の夜間に最大約2.5℃に達する。また,建物用地の20%を水面とした場合で最大約1℃,給湯と冷房のエネルギー消費をそれぞれ50%,100%削除した場合で最大約0.5℃の気温低下が見られた。地域暖冷房の普及による熱損失の軽減のみでは都市気候の緩和は困難であり,建物の断熱性やOA機器・家電製品の省エネルギー性の向上による暖房用および動力用エネルギー消費の削減の重要性が指摘された。
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