Research Abstract |
本研究では,道路交通騒音に対する能動制御防音壁の効果を,計算機上での数値シミュレーションによって検討した。 数値シミュレーションでは,音源は点音源とし,半無限障壁による解折解を利用して音波の伝搬を計算した。また,音源から発生する音は定常であるとし,実測データから得られた自動車騒音の周波数特性を仮定した。2次音源及びサンプリング用マイク,Cancel Pointは防音壁に沿って20cmまたは100cm間隔で設置した。Cancel Pointは防音壁の頂点である。 自動車騒音を能動的に制御する際に問題となる点は,音源が移動することである。高速で移動する音源に対して,時々刻々と能動制御装置のフィルター係数を変化させることは困難であると考えられるため,各制御装置のフィルター係数は音源の位置とは無関係に定まる定数とした。具体的には,等間隔に設置した各制御装置は独立とし,1台の車両が走行した時に,各Cancel Pointでのピーク値に対して最も効果が得られるように係数を定めた。 数値計算の結果,1台の車両が走行したときの受音点でのレベル変動パターンにおいて,ピーク値については数dBの効果が得られることが分かった。しかし,ピーク値以外の部分では効果が少なく,L_<Aeq>に関しては効果がほとんど見られなかった。また,オールパス値での騒音レベルを低減するには,制御対象とする周波数が最低1000Hz程度まで必要であり,2次音源を1m間隔で設置した場合にはピーク値に対しても効果がほとんど得られなかった。 今回の数値シミュレーションでは,かなり理想的な条件を仮定しているため,実際の道路の場合には,さらに効果が少なくなると推定できる。したがって,特定の箇所からの騒音のみを対象とする場合などを除けば,能動制御による自動車騒音低減の可能性はかなり小さいと予想できる。
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