Research Abstract |
本研究費により,Ni-5%Cr,-10%Crおよび-20%Cr合金の1%HCl-50%O_2-N_2雰囲気中における高温酸化挙動を調査した.酸化温度は973K〜273Kとし,以下に得られた新しい知見を示す. Ni-Cr合金の1%HCl雰囲気中における酸化増量曲線は、いずれの実験温度においても,長時間側で負の値を示す傾向が見られた。このことより、腐食生成物の揮発現象が起きていることを予測した。次に、実験後の試料から生成物を除去し、腐食減量を測定することにより、酸化速度を評価した。その結果、Ni-5%Crおよび-10%Cr合金は,いずれの温度においても、1%HCl雰囲気中で100%酸素雰囲気中に比べ著しく加速酸化されることがわかった.しかし,Ni-20%Cr合金では加速酸化は起こらなかった.1%HCl雰囲気中で一定酸化時間後の腐食減量は,Crを合金添加していくにつれ,Ni-10%Cr合金までは純Niに比べて増加するが,Ni-20%Crでは減少した.したがって,耐食性に及ぼすCr添加の効果は,1%HCl雰囲気中においても100%酸素雰囲気中と同様に20%程度で顕著に現れることがわかった.また、Ni-Cr合金は同雰囲気中において、Cr含有量20%以下ではFe-Cr合金に比べ良好な耐食性を示した. Ni-Cr合金上に生成したスケールは全て酸化物であり,Ni-5%Cr,-10%Cr合金ではNiO,Ni-20%Cr合金ではCr_2O_3が支配的であった.また,1173Kおよび1273Kで行った実験では試料からのNiCl_2揮発が観察された.しかし,その量は,皮膜として生成する酸化物に比べかなり少なかった.これらの実験結果を熱力学的に考察し,酸化性雰囲気中にHClが共存している条件下では,金属の酸化反応と塩化反応の両方によって腐食が進行することを推測した. 以上に述べたように、本研究費による実験は滞りなく完了し、結果を日本金属学会誌等の学術論文誌に投稿準備中である。
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